治療方針-薬物療法
薬物療法の目的
精神科の治療においては、薬物療法と精神療法のどちらも重要な役割を持ちます。的確な診断のもとに、最適な薬物が適切に使われた場合、さまざまな精神症状を消失、あるいは軽減させることができます。薬物によって改善が期待できる症状として、抑うつ状態,躁状態,焦燥感,不安感,不眠,幻覚,妄想など、さまざまな症状があげられます。
対症療法的にこれらの症状を改善することができれば、患者様が本来有する自然治癒力の発現を期待できます。
当院の薬物療法
こころの病気でのお薬では、脳に直接作用して症状を抑える向精神薬が用いられます。
脳に作用して精神活動を改善する「向精神薬」とは?
抗精神病薬
統合失調症の妄想や幻覚、意欲低下などに効果的。
抗不安薬
不安や恐怖、イライラ、緊張を軽減する。
抗うつ薬
うつ病や強迫性障害、社交不安障害の治療に用いられるもので、抑うつを改善する。
睡眠薬
脳の興奮を鎮め、気持ちを落ち着かせ、眠気を催させる
気分安定薬
躁病や躁うつ病の躁病状態の治療に用いられる。異常な気分の高揚を抑える。
副作用について
向精神薬は安全性が高く、医師の指示通りに服薬すれば、危険はありません。
副作用は、薬の種類によって異なりますが、口の渇きや便秘、排尿障害、不整脈、脱力感、筋肉のこわばりなどがみられることがあります。気になる症状が現れたら、医師に伝えてください。
クロザリル治療について
クロザリルとは
当院では、クロザリル(クロザピン)による治療を行っています。
クロザリルは、治療抵抗性統合失調症に対して、効果があることが認められている唯一の薬です。海外では米国、英国をはじめ100ヶ国以上(2016年8月時点)で承認され効果を上げている薬剤で、国内臨床試験でも治療抵抗性統合失調症患者の50%以上に改善が認められています。
クロザリルの有効性と副作用
治療抵抗性統合失調症に対するクロザリルの有効性は高いのですが、白血球減少や心筋炎、高血糖といった重篤な副作用が出現するおそれがあるため、定期的な血液検査が義務づけられています。そのため新規に開始するためには原則として18週間は、入院管理下での治療が必要です。(最も注意すべき副作用である無顆粒球症が、クロザリル開始後18週間以内に発生することが多いため)
当院では、副作用出現時には必要に応じて搬送できるよう海南病院・桑名市総合医療センターと覚書を交わし、連携のもと、クロザリルの使用を行っています。
外来治療
入院でクロザリルを導入したあとは、外来で継続して処方を受けることになります。当院以外の外来へ通院することも可能ですが、クロザリルを処方可能な医療機関は限られています。統合失調症の症状や薬剤副作用の傾向には個人差が強いこともあり、当院外来での治療継続をお勧めしています。
また、クロザリル内服開始後の期間や状況に応じて1~4週間間隔での血液検査が必須となっており、この期間に応じた外来受診が必要となります。
※当院外来は院外処方となっておりますが、クロザリルにつきましては院内で処方致します